憂きまど

タイトルは「憂き事のまどろむ程は忘られて覚むれば夢の心地こそすれ」より。某大学国文学修士の人が趣味丸出しでおくる、アニメや小説の感想を中心になんでも。超気まぐれ更新。読んだ本はこちら→https://bookmeter.com/users/337037 Twitterは→@konamijin

積読の苦しみと反省、とある女性声優の本との付き合い方

 私は数年前から読書記録をつけている。読書記録を付けるメリットは多くあるが、いくつか挙げてみよう。

みじんこ - 読書メーター

 まず、既に買って家に置いてある本がすぐに分かるため、同じ本をまた買ってしまうという失敗を防ぐことができる。書店でスマホを片手に、「この本はもう持っている」と確認することができる。

 他に、感想を書き、要点を記録として残すことで、内容の整理と共に内容を思い出しやすくなるというメリットがある。

 私の読書メーターのページを見てくださった方はお気づきだろうか。私が最近読んだものは漫画ばかりである。なぜわざわざ漫画の感想まで残すのか、説明しよう。例えば、『のんのんびより』。最新の12巻は、2018年2月26日に発売された。では、その前の11巻が発売されたのはいつか。前年、2017年の5月23日である。この間、半年以上経っている。別の漫画の例を見てみよう。『信長の忍び』の最新13巻は、ちょうど昨日発売された。そしてその前の12巻はと言えば、やはり前年の8月29日であった。こちらも半年以上の期間が空いている。これでは前の巻の内容を忘れてしまっても仕方あるまい。いちいち前の巻を読み返すのも面倒だ。そこで、短い感想を残しておく。次の巻が出た際は、読む前にそれを見返せばよいのである。とても便利だ。

 漫画はすぐに、気楽に読める。ゆえに、そういったものばかり優先させて読んでしまう。新書や専門書は読むのに体力と時間が必要なのだ。しかし、現代では文庫化されたものであっても、後で欲しいと思った時には書店から消え、アマゾンの中古しかなくなっていたりする。だから、出た当初に「これは資料として使える」「後で読む」と思って買って本棚の肥やしにしてしまうのだ。「手元にある=必要だと思ったらいつでも目を通せる」というメリットはあるが、だんだんと溜まっていく本の数を知るたびに、気が滅入るものである。読み終わり、資料としても使わない本は段ボール箱に詰め、実家の方に送っている。母からは「床が抜ける」「売れ」とクレームが付く。

 この大量の積読があるという状況を解消するためにはどうすればいいか。断捨離か。いやそれはないだろう。無職になり、毎日読書に励むというのがベストかもしれないが、そういうわけにもいかない。ここで、私が知る女性声優二人の、読書に関する発言を見てみよう。いかにも唐突だが、読書に関して頷ける、共感できる意見だから紹介するのである。

 まずは上坂すみれさん。上坂さんはロシア文学に対して造詣が深いほか、横山三国志などの漫画も読んでいる。『上坂すみれ 25YEARS STYLE BOOK Sumipedia』では、自宅の本棚や、蔵書のごく一部が写真付きで紹介されている。そして上坂さんは、こんなコメントを残している。

 

 「本屋さんへは定期的に行くのですが、たいてい専門書コーナーで大量購入するので、積読本があるうちは次の本は買わないのが自分的ルール。」

 

 なんという正論だろうか。「積読本があるうちは次の本は買わない」という至極当然の方法を、彼女は提示しているのである。しかし、それでは先ほど私が述べたように「文庫化されたものであっても、後で欲しいと思った時には書店から消え、アマゾンの中古しかなくなっていたりする。」という状況には対応できない。しかしながら、私個人は絶対に店頭から消えたりしない、後々も残っているであろう本でさえも「新規開拓」と称して買ったりして結局肥やしにするという状況を生み出してしまっている。やはり「積読本があるうちは次の本は買わない」は胸に刻んでおくべきである。

 もう一人が花澤香菜さん。最近は「よりもい」の小淵沢報瀬役など。香菜さんは、村上春樹作品が好きだという話をこれまでに何度もしている。他にも山田詠美さんなど好きな作家名を挙げ、ラジオ「花澤香菜のひとりでできるかな?」(略称ひとかな)でも最近読んだ本の話をすることがある。

 まず取り上げたいのは、「ひとかな」の258回だ。リスナーからの、積読の話などが書かれたメールを読んだ後のコメントである。

 

 「私もあるなあ読んでない小説。なんかさ買って冒頭読んで、これは合わないかもしれんって思ったヤツってどうしても後回しになっちゃうんだよね。先に持っている好きな作家さんの本とかに走ってしまうんですよ。ダメね。なんかせっかく買ったんだから最後まで読めばいいのにね。」

 

 この後でもう2つほど紹介するが、香菜さんのこうした意見は、私の意見と全く同じなのである。確かに冒頭を読み、これは合わない、イマイチ入って行けそうにない、と思った小説は本棚に戻してしまうことが多い。もし仮に、家にあるまだ読んでいない本がこの一冊だけだったならば、しぶしぶ読み進めたかもしれない。しかし、積読状態であるならば、選択肢は数多い。別の積読に手を出す、また冒頭だけ読んで戻す、という悪循環に嵌ることも稀にある。こうして読みやすいもの、本当に好きな作家の新刊などばかりが読まれ、それ以外は肥やしのままになるのである。

 この後香菜さんは、最近は村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』を読んでいることや、読もうとしたきっかけなどを紹介。そして香菜さんは、こう語る。

 

 「自分のノッてる時に読むのが一番いいんですけど。今わりとね、ノッてるんでね。本読みたいぜ!って感じ。やっぱ読書の秋だね。なのでスイスイ読んでますよ。」

 

 この点も非常に共感できる。なぜだかはよく分からないが、「ノッている」時は本当にどの本でも読めるのだ。実に不思議だ。積読が多くあろうとも、すぐに読む本が決まる。普段であれば手を出さない積読にも自然と手が伸びる。自分の場合、その期間はあまり持続しないことが多いが、それでも、読書が本当に楽しいという気持ちになってスイスイ読めるのは気分がいい。何より積読が減る。

 次は、同じく「ひとかな」の218回。リスナーから「流行りの本を読むのと、自分が好きな作家やジャンルの本を読むのとではどっちが多いか」という質問を受けての回答だ。

 

 「私、両方かな。その時本屋に行ってこういう系の本が読みたいなって思って探し始めるのと、あと本屋に大抵今月の売れ筋ランキングみたいなのが載ってるじゃないですか。ああいうの見て他の人たちがどんな本を読んでるのかって分かるじゃないですか。その中で興味があるものがあったらじゃあ私も読んでみよって思って読んだりしますね。なので両方かな。」

 

 この後、でも正月は村上春樹三昧をしたということについて語っている。ここでの香菜さんの回答は、どちらにしても「本屋に行く」ということを重視していると受け取ることができる。前出の上坂さんも同様だ。そして私も、基本的に本屋に行くという点は同じだ。絶版などで中古しかないという場合などはアマゾンを利用する場合もある。しかし、私は本屋で探し始めるのではなく、事前にネットの評判なども調べてから「帰りに寄って○○という本を買う」と決めた状態で本屋に行く。その点では香菜さんと異なる。しかしながら、やはり本屋に行くメリットは大きい。買うと決めた本がある棚まで行く時間。そして、その棚で探す時間。その過程で、偶然自分が知らなかった面白そうな本に巡りあえるのである。こうした経験を持つ人は多いことだろう。そして首都圏の大型書店では、時折り著者サイン本が入ったりする。古書店などを利用せず、存命の作家のサイン本を定価で入手できるのもリアル書店の魅力である。

 今回はこのくらいにしておこう。こんな記事を書いている暇があるなら1冊、いや1ページでも読めという話である。